『できる社員は「やり過ごす」』を読んで -3回同じことを言われたら初めてやればいい

「指示されてもすぐにやらないで3回同じことを言われたら初めてやればいい。」


以前の職場でやり過ごしがとてもうまい人がいた。その職場は上司にかなり思いつきで指示を出す人がいて、指示を出したはいいが内容があいまいであったり、その通りにやると1週間後に指示を出すことを忘れていて結局やらなくても良かったりということも多々あった。そのやり過ごしのうまい人は、よくその上司にあれやっておけこれやっておけと指示を出されるのだが、いつものらりくらりとかわしている。「いつも(その上司の)指示に対してどのように対応しているんですか?」的なことを聞いたら冒頭のようなセリフが返ってきた。名言なような、そうでないような(笑)




そのことが頭にあったせいなのかは分からないが、「やり過ごし」という言葉が気になってこの本を読んでみた。 企業の現場でよく発生するやり過ごしという現象の効能と発生する背景、重要性等が説明されている。また、日本企業は外国企業と比べて未来傾斜原理(過去や現在の損得勘定よりも将来を見据えて現在の意思決定を行っていく原理)が強く、それが終身雇用や年功賃金制度等が発展した要因であり、日本企業が発展してきた要因であるということである。


やり過ごしというとどうしてもマイナスなイメージを持ってしまいがちである。そのやり過ごしの重要性と必要性を学者さんが論理的に述べていることに大きな意味があると思う。


上司が常に的確な指示を出してくれる場合はいいが、常にそのような上司とは限らないし、優秀な上司であっても間違った指示や認識外れな指示を出してしまうということは起こり得る。


正論で言えば、上司からの指示が誤っていたり認識外れだと気づいた場合は、その真意や詳細を問うて掘り下げたり、場合によってはその指示をしない方向で上司に働きかけるのがベストかもしれない。ただ、組織の中での序列や人間関係等の問題でそのようにできない場合が多いと思うし、言っても覆せない場合もある。やり過ごしはそういった指示をフィルタリングしてくれる。


また、これは私見であるが、組織の中ではやり過ごしのうまい人と下手な人の差は、仕事が宙ぶらりんな状態であるのを是認できる性格かどうかという点にあるのではと思う。


私自身、どちらかというとやり過ごしが下手な方だと思っているが、性格的に宙ぶらりんな状態で仕事が残っているのが嫌で、仕事が全部終わったクリアな状態にしておきたいと思ってしまう。以下のような状態でいつ終わるかわからないやり過ごしタスクが存在し続けるのが嫌なのである。


だからあいまいな指示であってもやり過ごさず、すぐにやろうとしてしまう。こういう性格の人はやりすごしは下手かもしれない。


ただ、複数の仕事が常に並行して存在するのは当たり前のことであるので、思い切って宙ぶらりんな状態にして残してしまう割り切りが必要なのかと思う。もしくは、タスクの存在自体を自分の頭からも消してしまうというのも手かもしれない。


※冒頭の例はちょっと極端かも・・。そもそも3回指示を出して初めてやらせる上司もある意味ツワモノ。